フランスで人気の日本製品

コンテンツ
インバウンドとアウトバウンドで成功するために
日本の製品はフランスでも高い人気を誇りますが、その「人気」の内容は二つのカテゴリーに分かれます。
フランス人が日本を旅行した際にお土産として購入するような「とても日本的なもの」と、日常生活に取り入れやすい「それほど日本的でないもの」です。
この分類を理解すると、インバウンド(訪日客向け)とアウトバウンド(日本から海外への輸出)それぞれの戦略が見えてきます。
今や世界中で行きたい国の上位国に入る日本。
もちろんフランスでも日本ファンはますます増えています。
ここでは、フランスで人気の日本製品に絞って考えたいと思います。
1. とても日本的なもの
フランス人に喜ばれる日本的なお土産は、お茶や酒などの食品、包丁や陶磁器といった伝統工芸品、漫画やアニメなどのポップカルチャー関連品などです。
すでにフランス語として定着している「SAKE」「YUZU」「UMAMI」「BENTO」「MATCHA」「KIMONO」「ORIGAMI」などの言葉が多いことからも、こうした日本らしい商品に対する認知度の高さが伺えます。

和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて以来、日本の食文化や用語が広く浸透し、包丁や食材は美食の国フランスのシェフにも重宝されています。
既に抹茶はMATCHA、弁当はBENTO、柚子はYUZU等、フランス語として定着し、日本製ではない数多くの食品も市場に出回っています。現地でアレンジできるものはフランスでも取り入れやすいということの一例です。

2. それほど日本的でないもの
もう一つのカテゴリーは、根本は日本的でもフランスのライフスタイルに馴染む商品です。
日本ならではのアイデアが詰まった文房具や100円ショップの便利グッズ、品質が高く洗練されたデザインの日本製眼鏡などはその一例で、無印良品(MUJI)の「シンプル」「ミニマリスト」というイメージも象徴的です。
鉄瓶やマスキングテープなどはすでにフランス人の暮らしに溶け込んでおり、パリの都心では住宅が狭いことから省スペース・整理整頓グッズの需要も高い。フランス人に限らず、日本製品には優れた「品質」「デザイン」「技術」が求められており、一般消費者は費用対効果の高い実用的な商品に魅力を感じます。
同時に、遠い日本から輸入される商品の価格は高くなりがちなので、差別化できる新しい商品が常に求められ、購入動機は「日本製だから」ではなく「買ってみたら実は日本製だった」という自然さが理想です。
根本は日本的なものだが、フランスのライフスタイルにマッチするもの = フランスの日常生活で普通に使いこなすことができるもの。

3. インバウンドとアウトバウンドで求められるものの違い
インバウンド(訪日客)向けの商品は、日本に来た人々が「ここでしか買えないもの」「日本らしい体験」を求める傾向が強く、和の文化やお土産として象徴的な商品がよく売れます。一方、アウトバウンド(輸出)では、現地のライフスタイルや規制に合わせた品質・機能性・デザインが重視されます。そのため、インバウンドで人気だからアウトバウンドでも売れる、というのは思い込みに過ぎません。逆に、機能的な文房具やシンプルデザインの生活雑貨のように、両市場で成功している例もあります。

4. 規制面のハードルを理解する
アウトバウンドで注意したいのは製品ごとの規制です。EUでは製品ごとに「機械指令」「低電圧指令」「医療機器指令」「玩具安全指令」などが定められており、必須要求事項を満たした製品だけがCEマークを表示して販売できます。玩具や一般向け電化製品、医療機器などはCEマークの表示が義務付けられており、輸入時にも厳しい審査が行われます。また、化粧品はEU化粧品規則1223/2009の対象で、発がん性・変異原性・生殖毒性のある物質の使用禁止や配合濃度の上限、ラベル表示義務などが規定されています。この規則は香水やパーソナルケア用品にも適用され、禁止物質や制限物質のリストが定められているため、化粧品やヘルスケア製品の欧州市場投入には高度なコンプライアンスが必要です。EUには他にも多くの規制があり、玩具や電化製品などCEマークが必要な製品やREACH規則の対象となる化学物質など、それぞれ別記事で詳しく解説します。
5. 両方の市場でうまくいく商品と戦略
インバウンドとアウトバウンドの両方で成功する商品には共通点があります。使い勝手が良く、デザインが洗練され、品質が高い商品は、国境を越えて支持されやすいのです。例えば、日本の高品質な文房具は観光客のお土産としても人気があり、海外の文具店でも評価されています。また、無印良品のようにシンプルで機能的なデザインはフランスの日常生活にも溶け込みやすいため、輸出の成功事例として挙げられます。さらに、省スペースや整理整頓のためのグッズは、パリなど住宅が狭い都市で需要が高く、インバウンドでもアウトバウンドでも支持を得ています。
6. インバウンドに力を入れつつアウトバウンドを展望する
アウトバウンド市場を諦めるのではなく、まずインバウンドでの成功を足掛かりにしながら、輸出への準備を進めるのが賢明です。訪日客から得た反応や評価をもとに商品を改良し、ブランド認知度を高めることで、海外市場への展開時に信頼を得やすくなります。また、アウトバウンドに挑戦する際は、現地の規制やニーズに合わせた調整が必要です。化粧品やヘルスケア製品のように規制が厳しい分野は専門家の支援が不可欠ですが、文房具や雑貨のように規制が比較的シンプルな分野から輸出を始めるのも一つの方法です。
最新記事 by 青木千映 (全て見る)
- フランスで人気の日本製品 - 2025年8月4日
- 日本の化粧品ブランドのフランス進出に必要なこと - 2024年8月17日
- ウェルビーイング – Well-being – - 2023年12月10日
お気軽にお問い合わせください
この記事へのコメントはありません。